【岡崎紗絵】現場でやさしさに泣いた過去?女優キャリアの「分岐点」とは
「これまで」と「これから」を語ったロングインタビュー
モデルと女優。2つの軸を行き来しながら、デビュー10年という節目を迎えた。「年数を意識してなかった」と正直な心境がこぼれたのは、走り続けている限り、現在地も通過点だから。
順風満帆に見える彼女のサクセスストーリーをロングインタビューでひもときます。
Topicターニングポイント
コテンパンに打ちのめされた。あの日々を経験と呼びたくない
役者としてのキャリアを振り返ると、2017年からこの5年は途切れることなくドラマへの出演が続いている。また、まかされる役柄も次第に主要なキャラクターが増えていった。
「今まで、どの作品も生半可な気持ちでは臨んでいないし、演じていて簡単な役なんてひとつもなかった。
その中でも、ドラマ『教場II』(フジテレビ系)は、自分の実力以上のものを常に求められる現場で、自分の至らなさやふがいなさに打ちひしがれる経験をさせてもらいました。人生で初めてちゃんと打ちのめされた。
中江(功)監督には、初めて役との向きあい方を教えてもらったというか、初心に立ち戻らせてくれた方です。
自分では気づけない芝居のクセができあがっていたし、自己流でやってきてしまったものに対して、まっすぐに“そうじゃないよ”と目を覚まさせてくれました。
私のシーンでは、10回、20回のテイクはもはや当たり前で、『岡崎のターンがきたら押す』と全員に思われていたと思います。もう、恥ずかしいとか、カッコつけるとか、自分を保っていられなくて、自我を捨てて、全部剥がされるところまで追い込まれる毎日。
嘘をつかずに、私はただ立ち向かっていくことしかできなくて、ただただ苦しかった。監督は、厳しいけれど、めちゃくちゃ愛のある方で、『役者なんだから現場を止めていいんだ』と言うんです。
私としては先輩方もいるし、自分のせいで現場が止まるなんておこがましいし、スムーズにいくように“及第点”をめざしていたのかもしれない。
でも、及第点で撮影がスムーズにいったところで、作品はいいものにはならない。いい作品をつくるという目的を見失ってはいけないと、プロとしてものづくりに向かう心構えに触れられた気がしました」
当時を振り返る中で、1度だけ思いがけず涙があふれる瞬間があった。それは辛さだとか苦しさからではなく、紗絵の心を守ってくれたさりげないやさしさの記憶。
「その日も何度もテイクを重ねてボロボロだったんですけど、夜の10時ぐらいかな?共演の松本まりかさんがケーキを持ってきてくれたんです。
たぶん、撮影の合間にマネージャーさんにこっそり頼んでくれたのだと思うんですが、『女子にこんな時間に(ケーキで)ごめんね。元気、出してね』って。
手紙も添えられていて、『私はすごく素敵なお芝居だったと思ってるよ』と書いてくださっていて、私、爆泣きです。もう、今でも泣ける。
大泣きしながらケーキを食べて、再び撮影に向かいました。まりかさんが同じような経験をされたからなのかはわからないけど、痛みに寄り添ってくださる心にすごく救われました」
撮影/女鹿成二 スタイリング/杉本奈穂(KIND) ヘア&メイク/菅長ふみ(Lila) モデル/岡崎紗絵(本誌専属) 取材・文/長嶺葉月