Ray

「かくれあざと女」の闇。私が恋愛出来ない原因は、親友でした

「かくれあざと女」の闇。私が恋愛出来ない原因は、親友でした
今や巷で共通語となっている"あざとい"という言葉。計算高くぶりっこな性格のことを言い、大抵の場合あざとい女は、男性には好かれ女性には嫌われるものだ。しかし、大学生の関山梨花(21歳)はあざとい女よりも厄介な、八方美人で女にも男にも好かれるかくれあざとい女と出会う。梨花の恋愛を狂わせるかくれあざとい女に梨花はどう立ち向かうのか。

高校3年生の受験期、辛くなった時はいつも華やかなキャンパスライフを想像していた。

たくさんの友達に囲また授業。彼氏との通学。授業後のカフェ巡り。

大学に入れば自然にそんなキラキラした生活になると信じていた。

ーそんな理想のキャンパスライフどこにあるのよ。ー

大学2年生の関山梨花(せきやま・りか)(20歳)は一緒に授業を受けているカップルのイチャイチャを横目にボソッと呟いた。

梨花は大学に入学し、ちょうど1年経ったというのに彼氏も出来なければ、友達ですらほとんどいないと言う有様だった。

自分の情けなさに落ち込んでたいた梨花は、子守唄のような先生の小さな声を右から左に流しながら外を眺めていた。

2年生の教室から見る満開の桜は、1年生の時見ていたピンク色より心なしかくすんで見える。

梨花はもともと人見知りな性格。

なかなか自分から話しかけることが出来ないから、友達も彼氏もできないってことは分かっている。

しかし、それ以上に自分の人間関係を壊している最大の原因が思い当たっていた。

それは唯一と言ってもいい梨花の友達、笹塚ゆり(ささづか・ゆり)である。

というのも、梨花は最近、ゆりの"かくれあざとい"行為に気付き始め、疑惑の念を抱いていたのである。

"かくれあざとい"親友に恋愛を壊される!

「梨花〜〜!!」

ぼーっと外を眺めていた梨花は急に呼ばれた自分の名前にはっとした。

声のする方を見ると、そこに立っていたのはゆりだった。

「ゆり…」

「梨花、教室に1人で何してんの?(笑)」

「1人?」

その言葉に驚いてあたりを見回すと、もう他の生徒や先生は教室からはいなくなっていた。

時計を見るともうとっくに授業終了時刻を回っている。

「授業終わってたの気づかなかった…」

「授業中外から見てたけど窓の外見て上の空だったもんねえ〜!ねえ、何みてたの?」

ゆりは駆け寄って、梨花と同じように窓の外を眺めた。

「あそこの桜、なんか今年くすんでるなあって」

ぴょんぴょん跳ねながら遠くの桜を見ようとするゆり。

「え、そう?すごいピンクで綺麗じゃん!」

そう言ったゆりから桜の香水の匂いがふわっと香った。

ゆりは桜みたいな女の子だった。

白い肌にほのかにピンク色の頬。ふわふわした焦茶色の髪。ぶかぶかのパーカーを着てもわかる華奢な体型。

何より、ゆりがいると周りが明るくなる。

ーそれで言うと私は、雑草?ー

お花見の時にレジャーシートに踏まれて隠れちゃうような雑草。

梨花は我ながらぴったりな例えにクスッと笑ってしまった。

みんなに好かれる親友は"かくれあざとい"女だった

「何笑ってんの!ねえそれよりさ、今日夜ご飯食べに行こうよ!K大の男子もいるの!」

いつも明るく優しいゆり。男友達も多いから、合コンなんかもよくセッティングしてくれていた。

ただ何回合コンに行こうが梨花に彼氏ができることは無く、ゆりに対する違和感が積もっていくだけだった。

ゆりが"かくれあざとい"女ではないのかという。

「え…どうしようかな…」

「行こうよ!そろそろ梨花も彼氏作ろうよ〜!」

梨花は気が乗らなかった。

ただK大と言えば偏差値も高くチャラすぎもしない、女子大生の間で彼氏にしたい男の子が多い大学として知られていたこともあり、行くことにした。

ー今日はゆり、大丈夫だよね…?ー

ゆりとは同じ学部で1年生の時隣の席になり、好きな男性アイドルが同じということもあり意気投合した。

ゆりは梨花のファッションやメイクについていつも褒めたり、梨花の話になんでも共感してくれる。

梨花にとっては一緒にいて心地良く、楽しい存在だった。

1年生の時はゆりがいればもう友達もいらない、とまで思っていた。

でもゆりは梨花以外の友達もたくさん友達がいて、大学では知らない子とゆりが楽しそうに会話しているのをぼーっと眺めていることもよくあった。

最初はただゆりが人気者なだけだと思っていたけど、初めて彼女と合コンに行った時に気づいてしまったんだ。

ゆりの"裏の顔"を…

"あざとい"よりもタチが悪い"かくれあざとい"親友

「ねえ、梨花聞いてる…?」

「…は!ごめん考え事してた…」

「も〜(笑)すぐぼーっとするんだから!あ、ほら!着いたお店〜」

気づけば今日の食事会のお店に到着していた。

入りやすそうなイタリアンのお店で、いかにも合コンの雰囲気漂うお店だった。

続々とメンバーは集まり、最終的には男子が4人、女子は大学でよくゆりと話してるのを見かける女の子1人を加えた3人だった。

「乾杯〜!!!」

会は始まり、1人ずつ自己紹介をしていくことになった。

もともと名前を覚えるのが苦手で、こういう場では最後まで名前を覚えられない梨花だが、1人一瞬で名前を覚えた男の子がいた。

右から2番目に座っていた横尾伊吹(よこお・いぶき)だ。

経済学部の2年生で剣道部。黒髪マッシュで色白でクールそうに見えるけど、話す時にクシャッと笑うからいわゆる"モテ男"の匂いがプンプンする。

なにより、梨花の大好きなアイドルにそっくりだった。

ー今日こそ、積極的に頑張らなきゃー

そう思ってゆりの方を見ると梨花は一気に嫌な予感がした。

ゆりの目線の先にも伊吹君がいたのである。

#TAG
#短編小説
CATEGORY

記事カテゴリ

OFFICIAL SNS

Ray 公式SNS